(5週目)上司への妊娠報告
「カレー部長、ちょっといいかな?」
いつものとおり、課長に呼ばれて席を立つ。
「12月●日、××さんが来日するんだけど、俺の代わりに夜メシ行ける?」
「!」
そのタイミングは妊娠3ヶ月、一般につわりが最もひどいと言われているタイミングでは無いか。
でも、上司はまだ何も知らない…。
「多分、大丈夫、です…」
一度承諾し、席に戻ったものの、急に不安な気持ちが押し寄せた。
もし、その日に気持ち悪くなって、急遽欠席となったら、上司も居ないし営業不在は非常にマズイ。
というか、そもそも夜まで稼働する体力があるのだろうか?
検査薬は陽性とはいえまだ子宮に赤ちゃんを確認できていないので、上司への報告はもう少し先にと思っていたけれど、これは言うべきタイミングではないか。
ここまでの思考、約10秒。
「課長、すみません、ちょっとよろしいでしょうか?」
かなり挙動不審だったと思うが、課長を近くの会議室に呼び出して、意を決して、伝えた。
「おおー!おめでとう!」
課長は素直に祝ってくれた。
良かった!
その場で、以下の内容が決まった。
・今後業務はメールや電話の営業を中心とする。
・海外出張は代理を立てる。
・国内出張は原則として継続するが、体調と相談しながら臨機応変に対応する。
営業担当の頭数が少ない中で、このような内容をスルスルっと決断できた課長は、スゴイと思う。
私の前にも、先輩の女性営業職の産休・育休を経験されているからかもしれない。
加えて、私が伝えて良いと言うまで、妊娠のことは上司のところで止めておいていただけることになった。
妊娠5週目という、非常に微妙な時期ではあったけれども、やはり出張や会食の多い仕事だったので、直属上司の理解を得られたのは本当にありがたかった。
こればかりは上司の人柄や経験によるところが大きいので、私が偉そうに何か言えた立場ではない。
しかし、やっておいて良かったと思うことがあるとすれば、やはり半期ごとの人事面談(直属上司との一対一の面談)のたびに、子供を授かる意思はあるが、自然に任せていると伝えてあったことだ。
これだけ#metooがヒートアップしている昨今、家族計画の話は、上司(男性)から私に切り出しづらいトピックだと思う。
だからこそ、面談のときは、できる限りオープンに自分の状況をこちらから伝えていた。
この日の上司の反応は「えっマジで?」ではなく「ついに来たか」という感じだったので、多少なりとも緩衝材として役立ったのではないかと信じている。